《MUMEI》 助け目を開け、見えたのは見覚えのある元気印の笑顔…と、見知らぬロン毛の青年だった。 「助けに来てあげたんだから、借り1ね」 「借りとかにしちゃう!?そこ!!」 そんな風景に青年は吹きだし、恭介の顔を見ながら「お前、ヘボそうだな」と笑った。 「なッ」 「黎司!!」 「フン」 お前こそ、思った通り無愛想な奴だなッ!! って、そんなこと考えてる場合か。 となりの部屋に聞こえてしまう…! 「おら。出ろ」 黎司とやらは、左手で金色の格子を掴むと、ドロドロと変形し、手に吸い込まれていく。 と思いきや、石のように固まった鉄が、ボロボロと床に落ちた。 クッションだけになった鳥籠から立ち上がると、思いっきり伸びをする。 「あぁー。体いてェー…」 その風景にまたしても、吹きだす黎司。 俺は少し睨んだが、スルーすることにした。 「さて、帰りますか」 梓がそういったその刹那。 梓の後ろに、不自然な影が現れ、梓を襲う。 「危なッ!!」 押し倒して、黒い先端をギリギリよけた。 急いで起き上がると、無表情な黎司の姿が見える。 だが、すぐに異変に気がつく。 パンチをしたように伸ばした左腕に、鉄製のナギナタが刺さっていることだ。 しかし、ナギナタで攻撃をしてきた張本人が、その場に見当たらなかった。 だが、黎司は痛そうな表情も、声を上げることもせず、無表情にナギナタを見つめている。。 あふれ出る血にびくつく俺と正反対に、全く気にしない奴を、“化物”だ、と思ってしまっていた。 黎司は、口裂けオバケのように不気味にニィと口を開くと、「甘ェな」と嗤った。 前へ |次へ |
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