《MUMEI》
戦闘
不気味な笑顔にぞっとする。
梓を見ると、ただただ、可哀そうな物を見るような目で黎司をみていた。

――――俺が可笑しいのか?

こんなに臆病な俺が可笑しいのか?


そう思えてくるような、感覚。


黎司はそのニヒルな笑みでナギナタを見ると、もう片方の手で触ることなくそのナギナタを溶かしていき、
またその鉄は硬直しもう片方の掌の中に落ちて行く。

その掌の中の鉄はグツグツと泡を出しながら形を変形させていく。

腕からボタボタと落ちる血を、鉄の上にかけると、その鉄の量は倍増して、だんだん形を構築していく。

――――完成形は、銃。

銃を掴むと、血の出ている腕を下ろした。血液が重力に逆らうことなく、下へと流れ、滴る。

やがてその滴った血液ですら、鉄の塊へと変化し、コロコロと塊が転がった。

そんな時だった。

俺の後ろに、何かの気配が感じられたのは。

まさにその瞬間。

――――黎司が、発砲した。

それとほぼ同時に、カキンという金属同士がぶつかり合う音が鳴り、二つの破片が俺のもとへ転がってくる。

“それ”は、見事に真っ二つに切断された、銃の玉。

俺は恐ろしくなって、震えだした。

梓も立ち上がって、俺の後ろを見た。俺はみれない。見る勇気がないんだ。
見たら、俺は発狂してしまうかもしれない。もしくはその瞬間に、殺される。

本気でそう思った。

「お前。本当にヘボかったな」

黎司が敵をみたまま、無表情のまま、俺を嘲笑った。

別にいいさ、どうでもいい。

自分のこと、どうこう言われたって、どうも思わないい。なぜなら、否定ができないから。


俺は、今から“吹っ切れる”ことにしよう。自分が死んでもいい。とりあえず、俺は、もう臆病な木佐森恭介を見たくない。


震えも止まり、ロボットのような無表情になると、そのままたちあがった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫