《MUMEI》 俺は、そうやって立ち上がっている時、無神経のうちに透明化していた。 梓や黎司が何か言っていたが、何も聞こえない。何を言っているのかさっぱり聞こえない。 そこに転がっていた、鉄の塊を掴むと、それも透明になった。 今なら、透明だ。 怖がる必要なんてない。 後ろを振り返った。 ナギナタを構えた少女。 その少女ですら、気持ちを読むことができない無表情。 今なら、攻撃できる。そう確信して、透明化した鉄の塊を相手に向かって思いっきり強く投げた。 バチン。「!」 梓はそうか!と驚いていたようだった。 少女は頬にあたった何かに痛みを感じた。 さっきのやつ…何かを投げたか… ナギナタを槍のようにクルクルと回し、円形のシールドをつくった。 これならどうだ。まだ、彼には攻撃の余地があるだろうが、私が攻撃したら、そいつは死ぬだろうな。 なんだって、私は強いのだから。 恭介は、音をたてないようにして、少女の後ろに回った。 だが、少女はフイッと振り返った。 俺の気配を察したか… だが、その隙に、バン、と彼女を狙う音が鳴る。 しかし、ナギナタによって跳ね返される。 黎司はチッと舌打ちをして睨む。 梓も、ただ突っ立っているだけではなかった。 前へ |次へ |
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