《MUMEI》

「…………………は 」


長い沈黙の中で息が漏れる。跳ね上がる体の振動を抑えるのに意識が傾いていたので、呼吸を忘れてた。

下唇が離れる、終わり?

顎を掴まれた。上向きに首を固定されて、しきりに唇を啄まれる。
引っ切り無しに唇が押し重なる。


 ちゅっ という衝突音が次から次に鳴り止まない。
「 ンン……」
疳を起こしそうだ。



燦爛とした白熱電球の光の粒子が肌に染み入って全身がひしめく。

威勢がよくなった七生はどんどん後ろに体重をかけてきた、上半身が斜めになる。背もたれが無いので奥の壁の手摺りを掴む。
上半身が七生の重みで沈んでゆく。握力が弱まり頭からバスタブへ落っこちそうになっていた。

七生が空いた背中に手を回し支えてくれる。それでも重心がとれないから片足をバスタブに入れて落ち着く。


「  ………あ」


バスタブに七生の足が入って来た。俺のもう片足も持ち上げられて湯舟に沈めるように置かれる。七生が覆い被さってきた。


あまりに窮屈で唇が離れる隙を見計らっては上体を起こし縁に肩を預けた。それを七生はキスで追い掛ける。

やつは俺の足を延ばした隙間に膝を立て、キスを止めた。厚い胸部が視界に入る。





何もかもが初めての感覚でついていくのがやっとだ。まだ息が上がってる。

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