《MUMEI》
一日中満ち
体が鞭打ちで、朝を迎えた。
当然寝不足だし、修学旅行最終日の今日はバスでの長時間移動を控えているのに最悪なコンディションだ……。



そのけだるさが愛おしい。


「七生、起きなよ。」
肩を揺する。固い。



「……んー、あと5分。」
顔をしかめた。


「お前の準備時間じゃ今起きないと間に合わないよ」


「…………ちゅーしてくれたら起きる。」




    !!!




そういう対応の仕方は解らない。
どうしよう、どうする?
今まで七生は付き合ったらそういうことを普通にしていたのか?


七生に近付くと耳が真っ赤だった。物欲しげな薄目でこっちを見ている。

「……起きてるじゃないか。」
脇を擽る。


「ごーめーんーなーさーいー!」
バタバタ暴れた。危ない、蹴られる。

甘えているつもりらしい。出来るか出来ないか微妙な線の無茶振りをして、反応を楽しんでいるのだ。

俺は七生を観察し、それが本気か冗談かを見破る。これは、昔から二人の間でやっていた。喧嘩の後とか互いに何を考えてたか探り合う方法だ。








「いちゃつく度に撮ってやろうか?」
南が布団の中でカメラを構えてた。


「昨日の写真さ、二郎が1番よく写ってるのは二枚欲しいんだけど。」
あの言葉は冗談じゃなかったのか!


「おー!一枚200円な。」


「七生!
南も昨日のデータは消しておくこと!」
二人を制した。

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