《MUMEI》

ユズネとキスしてた

目の前で、マサカズとイズミがキスしてる

静かな部屋に、舌を絡めるときの音が、たまに、聞こえてた

前を、見ようよ

沈黙の部屋に、イズミの声がしたんだ

すぐ、マイナス思考になっちゃうの

ユズネが言ったんだ

私は、過去を忘れないよ、
自分を売り込むために、身体を使ったし、
あのバカ社長のために、身体で営業したこともあるわ
普通に感じたし、濡れたわ
でもね、荒んでっちゃう自分も居たの
お金や名声のために、身体を使った私を、 マサカズは優しく受け止めてくれてるから、
もう、マサカズを苦しめるような事は、絶対にしないわ
自分のためじゃない、マサカズの、ためなら、強くなれる

そう話したイズミに、優しいキスをしたマサカズが

僕も、風俗で女性を買ったことがある、
普通に気持ち良かったよ
でも、お金じゃその女性を奪いきれないよね、
ただ、入れて出すだけのせつない行為、
ユズネを欲してたときの僕も、それと変わらないって、気付かされたよ
過去の反省をいかしてくんだ

そう言ったんだ

ユズネの髪を撫でてた俺を、ユズネが見上げたんだ

……指、突っ込まれたわ

あの時のことを、話し出したユズネ

どうして、何も責めないの?

真顔で俺に聞くユズネ

おたおたするより、ぜんぜんかっこいいわ!
ユズネは間違ってないわ!

イズミが叫ぶように言ったんだよね
ユズネをかばってるんだ

ユズネの髪を撫でながら、俺は、話したんだ

感じなかったろ?
なら、嫉妬もしねーよ、
それに、ユズネ、死ぬ覚悟だったろ?
だから、ブチ切れちまったんだ……

貴方の…足手まといになるぐらいなら…
……死んだ方が…

バカ……二度と会えなくなっちまうだろうが……

俺にしがみつき、ユズネが涙してた

そっと抱きしめ、頬を寄せたんだ

わかりあってるんだ………素敵ね

本当に、素敵だよ…
あの頃より、今の方がもっと、ユズネを好きだな
本当に素敵な女性だよ、ケンスケを愛してる、ユズネは

私もよ、ユズネの言葉を借りれば、
ヤリチンのケンスケなら、そのうち忘れられる、
でま、今はね、遊ばれて良かったって本当に思えるの
だって、私は遊びじゃなかったもの、
昔の男を、誇りに思えるのは、貴方だけかな、

強さも必要なんだね
大切な人を守るためには

マサカズが、言ったんだ

強いじゃねーか、
強さは、腕力じゃない
ユズネを守ってくれた、
ありがとう

止めてくれよ、僕はユズネを大切に思ってるし、
ケンスケも大切な親友だと思ってるんだ、
自分のためにしたんだ、人のためじゃない、
けど、もっと強かったら、不愉快な思いをさせずに守れたかなって…

私に逃げろって……
お腹蹴られてたのに……ナイフを突き付けられてたのに…

強さは、きっと、誰かを思う気持ちから生まれてくるんだ
マサカズは、強いよ
なまじ、腕に覚えがあるから、攻撃的になっちまうんだ……
殺そうと………思っちまった…

ケンスケ!

人殺しは、初めてじゃない、
けど、汚れた手で、ユズネを抱いたら…



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