《MUMEI》
『抱かれたい』


*アダルト表現あり


『話があるんだ。』

いつも教室の隅っこで静かに本なんか読んでる、一度も話した事ないヤツに…。

普段の俺なら即断るところだが、デート相手にドタキャンされて暇してたし、コイツの話とやらにも少し興味があったので、軽い気持ちで頷いた。


放課後の教室に、俺と有馬慎吾(アリマシンゴ)の二人きり。


「…で、話って何?」

さっき買った、チューパックのイチゴミルクにストロー刺しながら尋ねる。




『僕を抱いて欲しいんだけど』




ブシャァァァ……。
思わずチューパックを握り潰していた。

…あぁ、まだ一口も飲んでなかったのに…って今はそんな場合じゃなくて…何言ってんだ?この真面目くんは?


「はい?あぁ…ハグの事?軽い抱擁ね、外人さんがよくやる挨拶みたいな…」


そう言ったら、有馬は溜め息を吐いた。



『違う、S,E,X,…セックスの方!』



ゲホッガハッ…
飲みかけたイチゴミルクが鼻から垂れた。

何を言い切ってくれてんの?この真面目くんは…。

一度も話した事ないヤツに『抱かれたい』等と言われるとは…。


「何故、俺と?」


『噂。来るもの拒まず去るもの追わず、誰とでもで一回限定だって…』


…噂怖っ、いや確かにそうだけどね。俺って無節操男だし、面倒嫌だから深入りしないしね、だけど、そんな男にもこだわりってのがあってね…。


「断る」

『え?』


「お前、何とち狂ってんのか知らねーけど、無理、諦めろ!」

…大方、好きなヤツに恋人が出来たとか振られたとか、そんな理由で自暴自棄になってるんだろうけど、俺の事を好きでもねーヤツを、はいそーですか!って抱けるかよ。



『……解った。』

有馬は、クルリと踵を返して扉へと向かう。


「は?解ったって、ちょ、お前、有馬…何処へ行く?」


『何?君が抱いてくれないから、街に出て誰か抱いてくれる人を探すんだけど…』


…普段真面目で大人しいヤツが暴走したらヤバイんだな。ちっ、しゃーねーなぁ。ちと脅かすか。


「解ったよ、抱いてやるよ。」

『え、本当?』

「但し、俺の事をその気にさせられたらな…」

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