《MUMEI》

俺はあの後、脇腹を抱えながら梓と同じ病院へ行き、梓は看護師にさんざん説教を食らいながらエヘヘと苦笑いをしていた。
黎司はそんな梓の様子に冷や汗を書きつつも、表情は柔らかい笑み。だが黎司もいやいやながら治療を受けていた。


俺はしばらく病院暮らしになりそうだ。

皆より出遅れるが、自分のペースで進んでいけばいい。

それに、心強い戦友たちがいる。

時を共にする友がいる。

ここは、現実より“死が近い”世界。だけど、俺にとっちゃ大切な世界になったんだ。

病室の窓のカーテンを靡かせた、その柔らかい風に、俺は微笑んだ。









だが、この頃の俺達は知らない。



これから予想だにしないことが、この身に起きること―――――

俺を待つ、残酷で、衝撃的な事実。この世の理のこと――――


―――そう、杏のことも、だ。
 

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