《MUMEI》 一時停止システム俺達は、消灯時刻まで病室でトランプなどをして暇をつぶした。 消灯時刻になると、皆死ぬように熟睡してしまった。 少し、窓の額縁の中、美しく煌めく半月を眺めていた。 冷たい風が気持ちいい。 さて、そろそろ寝るか、とカーテンをしめ、布団に潜り込んだ時だった。 頭にズキンと、突き刺さるような激しい痛みを感じ、頭を抱えてもがいた。 ナースコールに手を伸ばすが、ある程度まで伸ばすと、体が硬直したように動かなくなり、頭の痛みにただ、苦しんだ。 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!! 苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい!!! 助けて助けて助けて誰か―――――… 頭の中に、何かが入り込んでくる。 なんだよこれ…なんだよこれ…! 灰色の砂嵐。バグが俺の脳を蝕んで、意識を奪われる。 ノイズが俺の周りを飛び交い、五月蝿い夏の蝉のような音が、高い電子音と共に輪唱。 目が虚ろになり、水分のない乾いた眼球が悲鳴を上げる。 徐々に体中に広がる突き刺さった痛みで、俺はとうとう自分の体を手放した。 『一時停止システム、ダウンロード完了。ただいまよりシステムを実行します。カウントダウン開始。5、4、3、2、1、…』 『実行、開始』 前へ |次へ |
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