《MUMEI》
5日前
 この日は朝からひどく体調が悪かった
全身を覆う倦怠感に起き上がる事が出来ず、一日を床で過ごす羽目に
熱もあります
額に手を触れさせてきた妻が心配気に呟く
「もう、そろそろかもな」
自分が逝くが先か、世界が死ぬが先か
そんな事を思ってしまったとたん、温もりある滴が降ってきた
何かと見上げれば、妻の泣き崩れた顔が目の前
つい、口に出てしまっていたのだろうか
彼女の前では口にしない様、意識しない様に努めていたのに
「……悪い。冗談だから」
何とか上半身だけを起こし、妻を抱き寄せる
細く、華奢な身体
そんな彼女に、自分はどれ程の重荷なのだろう
弱っている身体はやはり後ろ向きな思考しか自分に与えない
昨日、あんなに無理をするからです
若干怒った様な口調で、妻はそのまま身を翻す
台所へとその姿が消えたかと思えば、直ぐに戻ってきた
唯その手には、先にはなかった小さな小鍋が握られている
「……コレ、粥か?」
ふたを開けてみれば、中に入っていたのは白粥
態々作ってくれたらしいソレに一言礼を伝え食べ始めた
自分が思っていた以上に腹が減って居たのか
ほのかに甘いソレは胃に優しく染み込んでいる様だった
「ごちそーさん。美味かった」
両の手を合わせ、箸をおくと
満腹になったからか、眠気に襲われる
うとうととしてしまえば、妻の手が額へと触れ
少し、寝て下さい
身体が睡眠を欲しているのだろうから、と
柔らかく髪を梳かれ寝る事を促される
この手は、まだ変わることなく暖かい
そんな事に安堵してしまいながら
自分は襲い来る眠気に逆らう事無く寝に入ったのだった……

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