《MUMEI》
death〜死〜
…結局遅刻しちゃった。
ダッシュで教室に駆け込む。
友達や先生に言い訳をしながら席について、鞄を机の上においた。

「松崎、遅いぞ。何かあったんか?」
先生に聞かれた。
「いえ、特に何も…ちょっと寝坊してしまいまして…」
事故が起こった現場を見てしまいましたが。
そう言いかけて、慌ててそれを言うのを止めた。
寝坊したのだって、事実だし。

「そうか。十分ほど前に事故あったらしいからそれに巻き込まれたかと心配したぞ!」
嘘つけ。
校内でのいじめとか見て見ないふりしてるのに。
心配してる訳がない。
「T中の生徒らしいし松崎来ないし心配したんだぞ!」
…!
さっき気合いで忘れかけた事がまた戻ってくる。
T中?だとすると…?

「え?…誰なんですか??」
問いかけた瞬間。
「あのな…」
そっと、私の後ろに座っている女子、私と同じ吹奏楽部の雄衣が言った。
「もしかしたら、いや絶対、由紀ちゃんが知ってる人だと思うな。」

「…え?」
それって…どういうこと?

ぽつりぽつりと、雄衣は話している。
「あの人、今朝見たんだ…。私が自転車漕いでたらちょうど家から出てきて…。気にしないでそのまま漕いでたら後ろからバンって音が…。」

どうやら話すのをためらってるみたい。

「早く言って?一体あの人って誰なの?雄衣」
私は雄衣を急かした。
早く真実が知りたかった。


「……だよ…。」
しばらく間をおいてから雄衣が言った言葉は、声が小さすぎて私には聞こえなかった。

「…え?」

「事故に遭ったのは…齋藤先輩だよ。」

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