《MUMEI》
海水浴で…
今、ほっぺをプクーッと膨らませて拗ねているのは、俺より二個年下の笑顔が可愛い、乳首大好きエンジェルくん。


『ほら、機嫌直して?エンジェルくん。』


「………」


『だって断れなかったんだ。サークル全員強制参加だったから。』


「……プクッ」


…あ、またエンジェルくんのほっぺが膨れた。


彼が拗ねてる原因は海。
俺が、大学のサークル仲間と海水浴に行ったから。エンジェルくん曰く、俺と一緒に行くのを楽しみにしていた。のだそうだ。


「僕以外と海に行って泳いで、僕以外に乳首見せたんですね。」


『え?そこ?拘るの?』


…まさかの乳首。またしても乳首。この乳首大魔王め!はぁっ…。


『あのね、エンジェルくん。誰も俺の乳首なんて気にしないって。そんな変態、君位だよ…』


…言い終えてから、しまった。と気付く、が後の祭り。


「せ、先輩の馬鹿!どうせ変態ですよ、スミマセンね!もう先輩なんか…先輩なんか…通り魔に乳首舐められちゃえ!馬鹿ぁぁぁ…」


『ええっ?何、その捨て台詞!ちょっ、エンジェルくーーん?』


聞き捨てならない捨て台詞を残して、エンジェルくんが出て行った。


『はあっ、もう馬鹿エンジェル。俺の話、何も聞いてくれないんだから…お土産もあるのに、な。』


アパートのドアを眺め、溜め息を吐く先輩でした。


*****


「馬鹿…先輩の馬鹿。」


…僕が、どんなに先輩と一緒に海に行くの、楽しみにしてたか知らないんだ。馬鹿、馬鹿。


泣きそうになりながら、先輩のアパートから走り出た。路地から賑やかな大通りをトボトボと歩く。と誰かにぶつかった。


「あ、スミマセン。前見てなくて…」


『いえ、こっちもスミマセン。…て、あれ?君。』


声の方を見れば、見覚えのある顔。たしか、先輩の友達?


『あ、アイツの部活の後輩くんだよな?確かエンジェルくんだっけ?』


「あ、はい。まぁ…」


『アイツさ、最近彼女でも出来た?』


「え?」


『突然ごめんね、いやこの前、サークル仲間と海行ったのよ。でさ、アイツ泳がないんだ。なんか約束だ、とか何とか言って、服着たまま…結局ビーチで荷物番してんだよ。』

「…約束?」


……て、知ってる。
それは僕が勝手に押し付けた約束事。


《僕以外に乳首見せちゃ駄目ですよ?先輩》


《今年海開きしたら一番最初に、先輩と海に行って泳ぎたいんです》


…あぁ、馬鹿は僕だ。
先輩は先輩は、僕との約束を守ってくれていたのに…


「…居ますよ、先輩の恋人。我儘で嫉妬深くて、お馬鹿な恋人が…」


『え?やっぱそうなの?アイツいつの間に…てか君、何処に行くの?』


「あ、スミマセン。僕、用事思い出したんで…」


僕は、踵を返し先輩のアパートに全力疾走した。

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