《MUMEI》
病の黒狼
レクスが背後に弟の気配を感じたのは旅立ちから数日後とある森の中。
しかし、弟のゼクスは立ち上がるのさえやっとだった。
歩いてここまで来るのは不可能な筈………だった。

振り返る。
自分と瓜二つの黒い狼族の少年が弓を背負って立っていた。

「ゼクス……?」

しばらくの沈黙。

「まさか…………な。」

「兄さんっっっっっ!!」

がばっと抱きついてくる。
子供っぽいところは相変わらず。

「何故ここに………?」

「僕を置いていくから悪いんだ!」

「置いていった事は謝る!だが、ここまでどうやって来た?」

「歩いて来た。赤い石探すんだよね?兄さんの願いかぁ〜気になるなぁ♪」

「………馬鹿だ。」

「馬鹿とは何だ〜っ!気合いってすごいね♪動かない体が動くんだもん♪」

「馬鹿だ………(確信)。」

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