《MUMEI》 1日前真夜中に心臓がひどい痛みを訴えた その痛みに眼を覚まし、自分は弾かれた様に身を起こす 冷汗が全身を覆い、寒気を感じさせ、堪らず自身を掻き抱いた 「……まだ大丈夫、だな」 小刻みに震えてしまう身体は痛みの所為か、それとも恐怖か 否、そのどちらともなのかもしれないと 自分は何とか呼吸を整え、肩を撫で下ろす 大丈夫ですか? 起こしてしまったのか、傍らから妻の声が聞こえ身を起してくる 自分は何でもないから、と無理矢理に笑みを浮かべ だがそれが虚勢だと、妻にはすぐにばれてしまう 大丈夫です。あなたは、まだここに居ます 背後から抱きしめてくれる彼女の体温に身体がフッと楽になる 今日1日、今日1日だけもってくれさえすれば 妻を悲しませずにすむ、と 全身に広がった震えを抑え込む様に妻の身体を抱き返していた 「お前は?お前は、大丈夫か?」 体調は回復したのかを尋ねれば小さく頷いて返してくれる 自分を労わる様に背を撫でてくれる手を取ると、自分の頬へと宛がい 縋る様に唇を触れさせる それがくすぐったいのか、妻ははにかんだような笑みを浮かべながら 今日の朝ごはんは何が食べたいですか? いつも通り、それを問うてきた 最後まで、普通通りに そうしてくれようとしている妻の気持ちが、解るから 自分も普段通りに悩むことを始め、そして 「……味噌汁と卵焼き、だな。甘くて、フワフワのやつ」 自分の望むソレを伝えてやる 分かりました、との声が返ってきたかと思えば、妻は自分の身体をまた抱きしめ まだ早いから、と改めて寝る様促された 髪を柔らかく梳かれてしまえば、やはり寝が足りていなかったのか すぐに瞼が落ちてくる とろとろと微睡む様に寝入る瞬間 「……ありがとう、おやすみ」 無意識にその言葉を伝え 自分はそのまま寝に入ったのだった…… 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |