《MUMEI》

ダンッ!

短く乱雑に生い茂る草を力一杯に踏みつけ、天高く飛び上がる。

風圧で草は俺とハルを中心に輪を描いた。

「こんな時でも飛ぶのは気持ちいいのな!」

風を切りながら、俺は満面の笑顔でハルに言った。ハルは少し可笑しそうに俺を見た。

「それもそうね。」

優しく微笑んだ。

そのまま外壁も飛び越え、オリガルト内へ急降下していく。

と、そこで俺達は目を見合わせた。

「うおぉぉぉおあ!」

思いの外、足場が無かった。

「ちょっカケル!どうしよう!?」

「俺の方こそどうしよう!?」

二人で行方も解らず空中であたふたと手足を降っていた。

しかし、考えていた事は同じ様で、二人とも人の多い広場から少し離れた人の少ない店先に斜めに落ちて行く。

もしも自分がこの光景を離れて見ていたら吹き出すなぁ、と苦笑しながら唯ひたすら地面に近付いていた。

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