《MUMEI》
6日前
 海に行こう
そう、友人誘われた
この状況下でよくもそんな気分になれるものだと内心毒づきながらも
気分転換にはなるのでは、と友人数人と連れ立って行くことに
人気のない、海水浴場
いい年した男が群れをなし、はしゃぐ事を始める
「なぁ。アレ、なんだ?」
不意に、友人の中の一人が指を差した先
何事かと自分もそちらを向いてみればソコに
見覚えのある後ろ姿があった
「な、なぁ。あれ、ヤバくないか?」
唯佇んでいただけの後ろ姿が徐々に水に沈んでいく
腰程まで水に浸かったところで
彼女が決して水と戯れるためソコに居るのではない事を察し
自分も水の中へと飛び込んだ
「何やってんの!アンタは!!」
手首を掴み上げ、その勢いが強過ぎた所為か
彼女の身体を抱きしめたまま自分は水の中へと倒れこむ羽目に
全身がすっかりずぶ濡れてしまっていた
何でここに居るのか
睨み付けられ、自分が昨日言った事を思い出す
人目の付かない処で死ね
ソレを実践しようとしていたのに、との彼女
本気で言った言葉ではなかった
唯感情に流されたまま言い放ってしまっただけで
それが彼女をさらに死へと固執させてしまったらしい
「……ごめん」
居た堪れなくなり謝ってしまえば、彼女の頬に涙が伝う
死を望んでほしかったわけではない
唯、世界の終わりを前に死に急ぐ事だけはしないで欲しい、と
本当に、それだけだった
「俺で良かったら、いつでも呼んで」
彼女の事など何も知らない
それでも抱きしめれば縋って来てくれるその身体を、突き放す事が出来ない
何が彼女をここまで追い詰めるのか
分かる筈もなく、自分は唯々その身体を抱き返してやるしか出来なかった……

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