《MUMEI》 5日前目の前に、赤黒いそれが広がっていた いつでも呼んで そういって彼女に教えた携帯番号とメールアドレス そのメールに入ってきた、彼女の自宅らしき住所 ソコに来いとでも言いたかったのだろうかと向かってみれば 手首を血塗れにした彼女が玄関先に立って居た 自分は慌てて家の中へと彼女を連れ立って入り 早急にタオルで止血してやった後、手当てをしてやる 「……確かに、いつでも呼んでって、俺言ったけどね」 何故、こんな状況になってから呼ぶのか つい愚痴る様になってしまえば、彼女は顔を伏せてしまい何も答えない 「ま、呼んでくれて良かったけど」 終わったから、と手を放してやれば だが彼女は項垂れたまま何も言う事はしない 最早ソレに慣れてきている自分も何を返してやる事もせず 「……じゃ、俺帰るから」 そのまま身を翻す 丁度玄関に差し掛かった処で彼女へと向いて直り 「話して、みない?俺、聞くよ?」 自分を態々呼びつけているのは 恐らく話したい何かが彼女の中で燻っている所為だ どうにかしてソレを引き出してやることが出来ればと 自分は穏やかな声で言って聞かせながら彼女の頭へと手を置く 子供にしてやる様なソレを 振り払うかと思いきや、彼女は素直にされるがままだった 生きる事がそれ程までに辛いのか 一体、何がそんなに苦しいのか 聞いても得られない答え、分からない事がひどくもどかしい 「話したくないなら、別にいいけど」 仕方がない、と肩を落とし、自分はまた身を翻す そのまま外へと出ようとした自分の服を、彼女の手が引き止める様に引いてきた そして、見えた涙 自分が知りたいのは、その理由だ 分かりさえすれば、慰めてやる事位してやれるかもしれないのに、と もどかしさをさらに感じながら 自分は暫くその場から動く事はしなかったのだった…… 前へ |次へ |
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