《MUMEI》
4日前
 「おはよ。目、覚めた?」
翌日は、彼女の部屋で迎える事になった
結局、あのまま手を放してくれないまま泣き疲れて眠ってしまい
自分は起こしてしまうかも、という事が先に立ち
ソレを振り払う事が出来なかった
仕方なくソファへと腰を降ろし、彼女に膝枕をしたまま世を明かす事に
その間、自分は一睡もしていない
何故、ここに居るのか
昨日の事をまるで覚えていない様子の彼女へ
自分は苦笑を浮かべると一から説明してやる
「って訳。納得してくれた?」
説明が進むにつれ
昨日の失態を思い出し、彼女は顔も赤く俯いてしまった
「何も知らない奴の方が聞きやすい事もあるだろうし、話してよ」
優しい強制
こうでもしてやらなければ、この頑なな彼女は多分何も言ってはくれないだろうと
彼女が話してくれるのを待つ
意を決したのか、微かに息を吸う音が聞こえ、そして
ゆるりと話し始めた
恋人と喧嘩をしてしまった事
その恋人をすぐに事故で亡くしてしまった事を
「……そか」
自分がそれ以上、口にできる言葉はない
言葉はないが、自分は徐に両の腕を広げて見せ
「おいで」
彼女を、呼んだ
今は、思う存分泣かせてやろう
せめて明日からの残りの時間、少しでも笑って過ごせる様に
躊躇してしまう彼女の腕を引きそのまま抱きしめる
突然のソレに驚いたらしい彼女は瞬間、身体を強張らせていた
「大丈夫。絶対、一人になんてしないから」
約束する
耳元で何度も呟いてやれば、彼女の身体から強張りが解けていく
何故、ここまでしてくれるのか。会って間もないのに
自分の胸元に顔を埋め、肩を揺らしながら震える声
どうしてなのかは、自分にも良く分からなかった
唯少しでも生きたいと思う様になってくれれば、と
それだけを切に願うばかりだった……

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫