《MUMEI》
逃げるなら
「……気付かなかったな」
「どうしよう」
「今度こそ絶体絶命って感じ?」
 三人はそれぞれ緊張した面持ちで警備隊とミサを交互に見た。

「……諦めるか?」

ユウゴはポツリと聞いた。
その声にユキナとサトシは少し考え、同時に首を振る。
「……だよな」
ユウゴは頭をフル回転させながら頷いた。

行く手を阻むのは警備隊とミサ。
逃げるならば、ミサがいる方だろう。
しかし、彼女が何も武器を持っていないとは言えない。

「どう?自分たちの立場、わかった?」
ミサは得意げに笑いながら言った。
「わたしが合図したら、あんたたちはあの世行き」
「あんた、いつから警備隊より立場が上になったわけ?」
ユキナがやけに挑発的な口調で言う。
「別にそんなんじゃない。ただ、警備隊とわたしの目的が一致しただけ」
「僕たちを殺すって?」
「ええ、そうよ」
「ふーん、本当に?」
ユキナは薄く笑みを浮かべている。
そして、ユウゴに視線を送ってきた。
ユキナの意図がようやくわかり、ユウゴは小さく頷く。

「……くどいわね」
ミサは両腕をダラリとぶら下げながら、また一歩、前に進んだ。

同時に、三人は勢いよく走り出した。

それを合図にしたかのようにユウゴの後ろから銃撃が始まった。

 三人は姿勢をできるだけ低くしながら、ユラユラしているミサの横を風の如く走り抜ける。
その瞬間、ユウゴの目には呆気にとられたように口をポカンと開けたミサの顔が見えた。

「ギャア……な、んで……なんっ!!」
背後からミサの絶叫が一瞬聞こえ、そして途絶えていった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫