《MUMEI》
2日前
 夜も明けきらない早朝
突然、携帯のメールの着信音が鳴った
こんな時間に何事かと開いてみれば相手は彼女で
慌てて内容に目を通して見れば
――が待ってるから、行かないと
それだけ、書いてあった
半ば寝たままで読んだそれは自分の目を覚ますのには充分で
弾かれたように飛んで起きると、慌てて寝巻を脱ぎ捨て
服も適当に羽織ると外へと飛び出していた
だが何処へ向かえばいいのか
見当がまるでつかず、自分は彼女の携帯へとかけていた
「今どこ!?」
返答はない、だが息遣いは聞こえる
声は聞こえているのだと自分は何度もその所在を問う
漸く居場所の見当が付いたのがそのやり取りを数分続けた後
自分は慌ててその場所へ
「……何、やってんの。こんな所で」
ソコは以前にも彼女が佇んでいた歩道橋の上
彼女はソコに立ち、また舌を流れる車を眺めていた
待ってるんだ、あそこに
自分へと向いて直った彼女は、満面の笑み
様子が、おかしかった
そう気づいた瞬間、彼女の身体が傾いていく
「まっ――!!」
落ちてしまう、と
咄嗟に手を掴み、彼女の身体を引き寄せてやる
「何で死のうとなんてすんの!?そんな事したってあの人は戻ってこねぇんだぞ!」
強く抱きしめ、怒鳴ってしまえば
彼女は嫌々を始め子供の様にぐずり始めてしまった
後、一日なのに
一日立てば否が応にも皆死んでいくというのに
「……俺じゃ、ダメ?気休めにもなんない?」
みっともなく縋りつく様に更に強く抱いてやれば
彼女の頬を、涙が伝い始めた
「後、もう一日だろ。……俺と、生きてよ」
彼女の涙につられるかの様に、自分の頬を涙が伝う
多分、世界が終わる瞬間になったとしても自分は泣かないだろうに
彼女の事を考えてしまえばどうしてか、涙が止まらなかった……

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫