《MUMEI》

「べっつにそんな事考えて無いよ!」

腰に手を当てて痛さアピール。

が、それも虚しくハルはジト目で此方を見ている。

「…ほんとに伸びてたもん。」

「伸びて無いって。ちょっとは見とれたけどさ。」

本当の事を言うとハルはそれが冗談で無い事に気付いたようで、ふぅ、と溜め息を吐き「ならいいけど。」と呟いた。

目を反らした後、なんだか顔が綻んだ。


俺が他の奴に興味を持っているのを嫌がるハルが、なんだか嬉しくなった。


「あの、あんたら、私の事完全に忘れてるでしょ。」

「「はぃっ!!」」

すっかり忘れてた。

「はぁ。まあ私は面白かったからいいけど。ところでさ、こんな所じゃなんだし、家に来ない?招待コード飛ばすから。」

「あぁ、私達も丁度行こうと思ってたの。ねぇ、カケル。いいでしょう?」

この短時間で仲良くなった二人の瞳は、楽しく耀いて見えた。

自分としては出会ったばかりの人間とまともに話せない俺が、上手く話せるとも思わなかったし、正直悪い気がした。

「あ、あぁ。」

それでも断れないのは、暗黙の了解なのである。

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