《MUMEI》
1日前
 昨日は、ごめん
一日が経ち、少しは冷静さを取り戻したのか
初めて彼女からああいった行為への謝罪の言葉を聞かされた
珍しい(と思ってはいけないのだろうが)と自分は瞬間虚を突かれ
だがすぐにフッと揺らして見せる
「……俺、本気焦ったんだからな」
柔らかな口調でそう返してやれば、彼女は俯いてしまい
自分はその頬を両手で挟むと顔を上げさせていた
「約束、して。俺と、生きてくれるって」
後一日しか意味を持たない約束
例え短すぎるそれだったとしても、彼女の口からその言葉を聞きたかった
生きたい、生きていきたい、と
返答を待つ間、自分は彼女から目をそらす事はせず
ようやっと頷いてくれたのを確認すると
つい彼女の身体を抱きしめてしまっていた
「あんたの大切な人だって、あんたが自分から死ぬ事なんて望んでないから」
そう思って居て欲しいと願いながらの言葉
実際はどうかは分からない
だが、その人物の想いを捏造してでも
明日という日を彼女と迎えたかったのだ
何故、こんなにも一生懸命になってくれるのか
今更に彼女はそんな質問を投げかけてくる
理由なんて自分にも分からない
唯あの時、放っておいてはいけない。そう思ったからだった
変な奴
何の得にもならないのに、と肩を揺らす彼女
「別に損得勘定で動いてるわけじゃねぇし」
そう思われるのも何となく癪だと返してやれば彼女は更に笑う
良い人過ぎると、その内損するよ、と
「良い人?俺が?」
思わぬ言葉を戴き、自分は意外そうな顔をつい浮かべる
自身が善人である自覚など今一わいてはこなかったからだ
だが
「……なら、その(良い人)のお願い、一つだけ、聞いてくれる?」
彼女を引き寄せ徐に抱き寄せてやれば
彼女はゆっくりと何を返してくる
見上げてくる彼女へ、自分は一瞬間を置くと
「……俺の、恋人に、なってくれる?明日まででいいから」
何故、そんな事を言い出したのか自分自身分からない
だが目の前の彼女を、どうしてか手放したくないと思ってしまったのだった……

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