《MUMEI》
見られてた!?
「私の知り合いにね、凄くモテる男の子がいるんだけどね…」


道中、須藤先輩はいきなりそんな話を切り出してきた。


「…はあ。」


全く俺と関係のない話。


先輩の知り合いなんて知る訳ないしさ。

だから、適当に聞き流す程度に聞いていた。



「その子ね、今日女の子に告白されてたの。」

「へぇ。それはそれは…羨ましいですね。」

「でもね、その男の子は全然に興味ないみたいなの。」

「…勿体ないですね。」

「しかも!告白してきた女の子っていうのが、その男の子の親友の片思いの相手だったらしくって…。」


「…………っ!!?」


身に覚えのある話。



「…見てたんですか?」


一番他人に見られたくなかったシーンだったのに。


「何事も正直が一番だよ?」


けれど、須藤先輩は俺の質問に答える事なく、ある一軒家の前で足を止めた。


「あの…?」

「送ってくれてありがとね。」

「え…?あ、はい…。」


俺は貧乏人丸出しで、その家に目を奪われていた。



「金持ちのお嬢様だったのか…。」


バイバイと手を振る先輩を見ながら、俺は一人呟いた。

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