《MUMEI》

「楓?」









電話からじゃない 音がした









すぐ近くで、聞き覚えのある低い声











「お父さん」











振り返ると、前より少しだけ目の下を黒くしたお父さんが立っていた







「おい…槙村?おい!」









電話のことなんて忘れてた








携帯を鞄にしまうと、お父さんが時計を見た








「少し、時間あるか」






「う、うん。少しだけなら」











言葉に迷った







少しだけなのかと、しょんぼりした自分に驚いた

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