《MUMEI》
Case4 ENDroll
 今日で世界が終わってしまうなんて嘘みたい
窓越しに外を眺めながら彼女がそう呟いた
今、この景色は彼女にどういう風に見えているのだろうか
ようやっと想う人の処へ行けると喜んでいるのだろうか、それとも
「……少しは、惜しんでくれたりする?」
問うてやりながら、彼女を背後から抱きしめる
彼女はゆるり自分を見上げながら、微かに笑みを浮かべていた
最後の最後にこの笑みは卑怯だ
自分ばかりが死ぬ事を惜しんでしまいそうで
もう少し、早く出会えれば良かった
自己嫌悪に表情を歪めてしまいそうになった瞬間
彼女から返って来た声
そして自分の腕の中身を翻すと、その腕が抱き返してくる
やっと生きてみようと思えるようになったのに、と
「……ごめん。本当、ごめん」
助けてやりたい、救ってやりたいと思うのに
何もしてやる事が出来ない自分が、腹立たしかった
何度もごめんを繰り返してやれば彼女はゆるり首を横へと振りながら
何度も、助けてもらったから
それだけで充分だと笑みを浮かべてみせる
「……俺、役に立った?」
縋る様に抱き返してやりながら問うてみれば
彼女が頷いてくれたのが知れる
それだけで、充分だった
「あっちで彼氏に会ったら、ちゃんと謝んなよ」
もう二度と喧嘩別れなんてしない様に
若干叱るような口調で言ってやり、彼女の唇へと自分のソレを重ねていた
ソレをまるで合図に死に始めた世界
酷く、最後が、甘い
唇を離せば世界が派手に軋む音を立てる
「奪っちゃった」
からかう様に笑みを浮かべて見せれば
彼女は驚きに口を開けたままで
なんて顔をするのだろうと肩を揺らしながら
「……もう、終わりみたい。じゃ、バイバイ」
どうか、元気で
別れの言葉を告げながらも
自分は世界が終わるその瞬間まで、彼女を離す事はしなかったのだった……


Dear 坂野 隆宏様
私、あんたが鬱陶しかった
死にたいって思うのに、その度に邪魔してきたよね
だけど、今はあの時sな無くて良かったと思ってる
アンタと最後を迎えられた事、私嬉しかったよ
助けてくれて、ありがとう
じゃ、またね
                From      より

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫