《MUMEI》 写真で泣ける話を…今日、僕の元に届いた一枚の写真付き葉書。 …子供が産まれました。 小さな赤ん坊を抱く女性の傍らに立ち、幸せそうな彼の笑顔。 …良かった。まだ大丈夫なんだな… その笑顔に、安堵する気持ちと……裏腹に頬を伝う生暖かな液体。 …ほんの1年と少し前、僕達は恋仲だった。 僕と彼は、同じ家に産まれ育った実の兄弟。勿論誰にも秘密な恋だった。しかし、秘密はいつかはバレる。許されざる事ならば尚更に…。 僕達の関係は両親の知る所となり、僕達は家出を図った。だが…居場所を突き止められて、追い詰められた僕達は、死を選び二人で海へと身を投げた。そのまま、死ねていたら幸せだったのかもしれない。神は僕達の死を受け入れてはくれなかった。 …僕達は死ねなかった、死に損なったのだ。 生き残った僕達は…生を粗末にした罪の代償に、僕は下半身不随になって車椅子生活を余儀無くされた。そして、彼は… …僕との関係を、一切忘れていた。 神の悪戯か、それとも彼自身が望んだ事だったのか…知るすべもないが。ともかく彼は、僕と言う愛していたであろう人間を記憶から綺麗さっぱりデリート(消去)していたのだ。忘却ではなく、失念でもなく……。 それを知った両親は、これ幸いと、彼を僕から引き離しお見合い結婚へと導いた。僕を遠く離れた他県の施設に追いやって…。 そんな事をしなくても、僕は邪魔する気などなかったのに…こんな身体の僕が彼の隣にいられるはずがないのに…。 願うのは、彼が記憶を取り戻す日が永遠にこない事。 想うのは、彼が幸せな笑顔を絶やさない日が永遠に続く事。 一枚の写真付き葉書を握り締めて、僕は神に祈る。 −−兄さん、幸せに−− 貴方が忘れても大丈夫。貴方の想いも二人分、僕が覚えていくから…。 僕と貴方は、確かに昔… −−愛し合っていた−− END ***** プチお久です。 稚拙な文ですが、読んでいただきありがとうございましたm(__)m 前へ |次へ |
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