《MUMEI》 少し緊迫した空気を、アカネの虚ろな微笑みが遮った。 「私は弱いから。」 そう言って、アカネはまた先程の少しツンとした表情に戻った。 何も聞けなかった。 ハルも何か言いたげだったが、俺と同様、機会を失ったのだろう。 「ほら、もうすぐだ。」 アカネが真っ直ぐに指を指す。 指先を辿ると、ある場所を中心として広がる線路が空中に浮かんでいる光景が目に映った。 これもいつもの光景だ。 そして、そのある場所というのが、先程までの俺達が目指していた場所であることは言うまでもない。 オリガルトステーション。通称 OS。 ミリオンマップに記載されている全ての街に行く事が出来る唯一の駅。 OSから伸びる無数の線路は、空を切って彼方へと続いていく。 《`ブレックドロップ´の配布は終了致しました。只今――…。》 耳にその言葉が届き、振り返る。すると、広場に溢れんばかりだった人の群れが、少しではあるが四方八方に散り始めた。 痛覚麻痺回復アイテムとやらの配布が終わったのだろう。 顔を上げて歩く人、俯いてゆっくりと歩く人。 そしてその奥にそのアイテムを配ったサーバー。 俺はオリガルトステーションへと続く軌道を変えた。 前へ |次へ |
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