《MUMEI》 「カケル!」 それに気が付いたのは、ハルではなかった。 「……アカネ。」 「何処行くのよ。」 目を見ただけで不安感が見て取れた。 それでも俺は向き直るだけで、力一杯地面を蹴った。先程まで配っていたであろうサーバーは一人。 どうりで配布時間が掛かる訳だ。 しかし良かった。 あれなら一人で抑え込める。 あのサーバーはきっとあの男――…矢吹慶一郎と繋がっている! いや、繋がっていると思いたい! なんらかの希望を持ちたかった。 全力で広場を駆ける。 すると、一瞬でそのサーバーの前に届いた。そして間も無く右手をそいつの首元に伸ばす。 瞬時に止められる速さじゃ無かった。 しかし、そいつの右手はしっかりと俺の手を掴んでいた。掌からは在る筈の無い冷たさを感じた。 前へ |次へ |
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