《MUMEI》

焦りも見せず、そいつは笑った。男にしては長く暗い赤髪が、風にそよぐ。

「お前…矢吹慶一郎の部下だろ。」

掴まれた右手に尚も力を込めつつ、心遣いの欠片も無い低い声でそいつに問い掛けた。

「部下?」

そいつの口許が更に緩む。しかし、目元は窺えない。暗い赤髪が遮っている為だ。

「それ以外の何だってんだ。」


「仲間だよ。」


そいつは自信満々に答えると同時に顔を上げ、目元が露になった。

朽葉色をしていた。

「同じ事を臨む同志、という方が正しいな。」

「お前達は多くの人を苦しめているんだぞ…!解ってんのか……!」

想いが顔にみるみる表れていくのを肌で感じた。

どれだけ顔が歪んでも、納得なんて出来る訳が無かった。

ハルの事。俺の事。ミリオンヘイムプレイヤーの事。

矢吹慶一郎の事。

想いに比例して、俺の右手は力を増していった。

それら全てでも無いだろうが、そいつは想いに勘付いた様で、俺の目を真っ直ぐに見据えた。

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