《MUMEI》
契約
もう少しで私の人生は終わってしまうのだろうか。
胸が苦しくて息がしづらい。
小さい頃から体が弱く、よく病院に入院していた。今だってそう。
最近あまり体調がよくなかった。
いつ死ぬかわからないとお医者さんにも言われていた。それが今になるなんて。
「ナー・・・ス・・コー・・ル」
最後の力を振り絞ってナースコールのボタンに手を伸ばした。
でも、届かなかった。ベットに倒れこんだ。
もう少し遊びたかったなぁ。お母さんにも一度だけでも会えればよかった。
私はゆっくりとまぶたを閉じた。
『まだですよ、死ぬのは早すぎますから。』
視界が暗いなか1人の男性の声が聞こえた。
『もう一度人生を進みたくないですか?』
人生を・・・
『李夜・・・珠理さん』
私の名前を知ってる・・
『貴方は誰ですか?』
『フィル・ヒュールと申します。誰といいますと、神様と言いますかね。』
神様?本当に。信じていいの?
「神様、ですか。それならば私に人生を与えてもらえますか?」
『与える事は簡単ですけど、そうなるとこちらが少し不利ですし。それではこうしましょう。私と契約を交わしてくれるのならば人生を与えてあげましょう。』
契約って何?
「契約とはなんですか?」
『私と契約をして、私のご主人様になってもらうだけです。簡単でしょう。』
「主人になり、契約を交わすだけ・・・。」
たったそれだけで、私の人生が再び始まるのなら。いくらでも・・
「契約を交わします。お願いします。」
『そうですか、嬉しいです。貴女みたいな綺麗な女性につかえる事が出来て。』
そして真っ暗闇の中に1つの光りが差し込んだ。初めてその時フィルさんの顔をみた。
フワッとした茶色い髪の毛、優しい目。
その姿にドキッとした。
彼は私の右手を手に取り、手の甲に優しいキスを一瞬した。
唇を離した瞬間、ひらひらと舞うピンクの蝶が出てきた。
私の回りを一周して最後に鎖骨にとまった。
そこからなぜだか意識がふわふわとしてきた。

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