《MUMEI》

「!」

アルテミスが矢を構えると同時に俺は両足に力を込めた。自慢の馬力で三秒で速さは弱まった。

しかし、アルテミスはそんなもの目に映っていないかの様に、矢を放つ。

一メートルも無い距離からの矢での射撃。

自分で言うのもなんだが、一般のプレイヤーなら体を穴空きにする事間違いなしだろう。だが、生憎にも、アルテミスと闘っているのはこの俺だ。

並のプレイヤーと一緒にされたら心外だ。

咄嗟に半歩だけ後退し、反発力で真っ直ぐ空中へ飛ぶ。軽く力を込めて飛んだ――…つもりだった。

俺の身体は五メートル、十メートルとどんどん地上が小さくなっていく。

「な…うわ、ちょ……!」

フィールド外へ逃げたと見なされたらどうしようかと一瞬焦ったが、それには心配が無い様だ。

フィールド内ならば、地下でも空中でも関係無い様だ。

上空からハルとアカネの姿が窺えた。

闘い中ながらも、やっぱり二人って可愛いなあ、なんて考えてしまった自分に嫌気が差した。


そしてその横のフィールド内で静かに瞬く光が一つ。アルテミスの掌だ。流石の俺でさえ知らない、会得していない魔法。

アバター内から半無限に弓矢が出てくる、強力魔法。消費魔力もさることながら、それを会得するまでに掛かったであろう時間は果てしない。


矢吹慶一郎を`同志´と唱ったアルテミスが、オールセレクトが、益々分からなくなってきてしまった。

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