《MUMEI》

岡本は唇に指を当てながら、小声で後を付いてきてと呟く
何か考えがあるのか、取り敢えずは岡本に任せてみる事に
そして向かったのは、近所の公園
そこには野良猫たちが集まっている一角があり
岡本は片平をつれその中へ
「此処は……」
「可愛い、でしょ。皆、いい子」
「……確かに可愛い、けど何で此処に?」
解らないと首を傾げて見せる片平へ
岡本は猫と戯れながら、何となくを返す
「……アパートでえはたくさんは駄目になっちゃったけど、ここに来たら、沢山いるから」
此処に癒されに来ればいい、との岡本
僅かに片平へと笑みをぅ亜kべ手見せれば
だが片平は答えて返すことはせず首を振って見せるばかりだ
「……どこまで情緒不安定なんだよ」
余りのソレについ愚痴ってしまう前野
ソレに同意するかのように村山は苦笑を浮かべる
「……岡本さん、君はなんていい子なんだ!」
震える片平の声が聞こえたかと思えば
その量の手を広げ、岡本へと飛びつこうとしている様が見えた
流石にそれはまずいと、二人は止めに入る
「そこまでにしとけ。変態」
「千秋、大丈夫?こっちおいで」
前野は片平を岡本から引き離し、村山は岡本を庇うように抱く
僅かに驚いたような岡本。村山の問うソレに小さく頷いた
「……片平さん、行き成りはやっぱダメでしょ」
「本っ当、何考えてんだか」
まるで変質者をみる様な二人の目
ジトリとしたソレを向けられ、片平はだが臆する事はなく
「いいじゃないか!久しぶりなんだから!」
との物言い
一体何がどう久しぶりだというのか
最早、改めてソレを問う気にもならない
「……千秋、お前ちょっと向こう行っててろ」
これ以上片平のそばに居させることを危険と判断したのか
前野は岡本の耳元へと唇を寄せ呟く
村山もそれがいいと頷き、岡本は解ったと頷いて返す
「……二人とも、気を付けて」
それは一体何に対しての忠告か
分かる様な気がしながらも、その実分かりたくもなかった
だがそれはすぐに本人の口から発せられることになる
「もうこの際君達でもいい!この僕を受け止め――!」
「る訳ねェだろうが!この阿保!」
すっかり見境を無くし、前野達へと飛び掛かってくる片平
当然二人はそれを避け、更には前野の拳が片平の頬を打っていた
「あ〜あ。一発K.O。流石那智」
一瞬にして片平は気を失ってしま地面へと伏してしまう
前野はその様に一瞥をくれてやり
片平の襟ぐりを引っ掴むと、そのまま引きずり帰路へと着いた
「なっちゃん、もう帰るの?」
「この馬鹿放置する訳にいかねぇだろ。そういや千秋」
「何?」
「あの子猫、首輪とかどうする?やっぱ、あった方がいいんじゃねぇ?」
何もつけていないと野良に間違われてしまいそうだと続ければ
岡本は暫く考えた後、村山へと身を翻す
「……キイ君。買いに行きたい」
その一言で何を買いに行きたいのかを村山は察する
懇願するように見上げてくる岡本の頭をなでてやりながら
「じゃ、行こうか」
後の事は前野に任せ、村山は岡本を連れ買い物へ
向かったのは近所の商店街、その中にあるペットショップ
様々ある首輪の中から仔猫に似合いそうなソレを選び
他、必要な物を一通り揃え店を出た
「……色々、ありがと。キイ君」
二、三歩先を歩く村山の背へと小声で伝えてやると
村山は徐に立ち止まり身を翻すと岡本の頭をなでてやっていた
「喜んでくれれば、俺は嬉しい。勿論、那智もな」
だから気にする必要はないのだと笑みを浮かべてやれば
岡本の表情もほんのりと和らぐ
「……なっちゃん、大丈夫かな?」
「ん?」
「片平さんと一緒で、血管切れたりしてないかな?」
つまりは怒りすぎで、だ
そんな心配をしてしまう岡本へ、村山は更に笑みを浮かべてやりながら
「なら、その子猫を可愛すぎるくらいに飾って、那智の奴を癒してやるとするか」
との提案
具体的には何をするのかと岡本が首を傾げれば
村山はとあるモノを取って出してきた
それは仔猫用の可愛らしい着ぐるみ
どうやら密かに買っていたらしく
「あの子には、ちょっと迷惑かもだけど、こんなのどう?」
村山からの提案に、岡本の表情が嬉しそうに綻ぶ
早く帰って着せてみようと、岡本は村山の手を引き歩みを速めた

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