《MUMEI》
『抱かれたい』の続き。
*他お題からの続きです。(『抱かれたい』)

*カズ(和宮)視点


ジュルジュル…プシュッ…
大好きなイチゴミルクのチューパックを啜りながら、クラス名簿を眺め唸りをあげる。


『うちのクラスだけで、4人もいるぜ…う〜ん、カズって呼ばれそうなヤツが…』


…先日の放課後に、普段教室の片隅で静かに本なんか読んでる、一度も話した事なかった有馬慎吾に、『抱いて欲しい』と誘惑され、理性で対抗したが、ヤツの色気に負けて、イタしてしまった無節操男カズこと俺、和宮昌樹は…


あの日、Hの最中に有馬が漏らした言葉が耳から離れずにいた。


「……カズ……スキ…」


…有馬が、好きであろうカズなる人物は、誰なのか?何故か気になってしょうがないのである。


教室の隅に目を向けると有馬と回りを取り囲む女子共が見える。


『ちっ、現金な女子共め!』


そう、あの日から有馬は変化した。正確には、二日間休んだ休み明けの日、今までうっとおしいくらい伸びて顔を覆っていた髪を短くカットして、顔をモロだしにして来た。


すると、目敏い女子が可愛いだの何だのと騒ぎ出し、現在に至る。


…なんかムカムカする。オイ、女子共!良く聞け!俺が一番なんですけど、有馬が可愛いんだって気付いたの!…


…って、俺、何?なんなの?このモヤモヤイライラ?…こんな気持ち、俺は知らねぇ…。


「よ、何してんだ?カズ。有馬をガン見して?」


『あ゙?なんだ、斎藤か?ん〜俺、ガン見してたかぁ?』


コイツは斎藤、俺のダチ。結構顔が広く情報通。そうだ、コイツなら…


『なぁ、斎藤。学校内に、カズって呼ばれるヤツ何人位居るか解る?』


「は?何だそれ?ん〜結構居ると思うぜ。で、有馬と何かあったのか?」


『何もねーよ。』


「ふ〜ん、有馬と言えば…変わったよな、アイツ。明るくなったんじゃね?」


そう言いつつ、有馬を眺める斎藤。


「お、カズ!噂をすれば、カズって呼ばれる人物が来たぜ。」


『ん?誰だ、あれ?』


見れば、有馬に近寄り、仲良さげに話している爽やかイケメン野郎。


「知らねぇの?生徒会役員の柊上総(ヒイラギカズサ)先輩だよ。通称カズ先輩って呼ばれてるみたいだぜ!」


…ソイツか?有馬、ソイツなんか?嬉しそうにしてんな…俺には、そんな顔、見せない癖に…。


あの日から、俺は有馬に避けられている、多分。挨拶しても、そそくさと居なくなるし、顔どころか目も合わせてくれない。


いや、確かにベタベタされるのは得意じゃない。だからって、あからさまに避けられるのも…はっ、もしや俺とのHがお気に召さなかったとか?で気分を害したとか…。


…なぁ有馬?俺下手だった?なんて聞けないし。もし、うん!て言われたら俺立ち直れねーし…。



「カ〜ズゥ!今日私とデートしよ?」


いきなり現れた女子に、横から抱き付かれた。誰?お前?


『ちょ、離せ…』


…あ、有馬が見てる。普段俺なんて見ない癖に、んな時ばっか…誤解されるじゃん。


とか思ったら、咄嗟に女子を突き放していた。


「きゃっ!」
『あっ、ごめん』


教室がざわめく。だって、俺が女子に優しくない態度を取るなんて初めてだったから。


「あはっ、ごめんね。カズくんは今日、あの日で御機嫌斜めなんだ。また誘ってね。」


慌てた斎藤が、女子を取り成した。


「カズ?どしたの、お前?熱でもあんじゃね?」


『熱……あるかも。』


…そう、あの日からずっと退かない熱がある。原因不明の熱に浮かされているみたいだ。


…原因不明?本当に?いや、解ってるんだ。このモヤモヤイライラも、続く微熱も…


…原因は、全部有馬なんだって事。


…俺は、もしかして…


『あ、ははっ、あははっ…なんだ、そっか』


「カズ?」


ポカンとする斎藤を置き去りに、俺は有馬へと歩き出した。

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