《MUMEI》

「ハッ!無駄無駄ぁ!」


アルテミスは弓の差す方向を即座に真上に合わせ、動きが停止した。

「?」


しかし、闘いの最中に意味の無い行動など無い。


掌の光が膨張して――――……。

「五倍だ。」

「!?」

ほぼ反射で出た両手と、スキル:アーガード。両手を十字にした処にシールドを張る事が出来る、優れものだ。

だが、元々毒や麻痺などを回避するためのスキルな訳で。

「ぅルアァ!!」

先程とは色見すら違って目に写った矢は、二倍…言葉通り五倍に膨れ上がっており、避ける事は到底敵わない。

「ぐああぁぁあぁ!!」

止める事も出来ずに絶叫していた。矢は躊躇い無く俺の腹部を突き刺し、それでも尚天へと伸びていく。


「カケル!」


ずっと遠くで、誰かに呼ばれた気がした。


「もう嫌!私も……私も闘う!」


まだかろうじて意識のある俺は痛みも消えず、徐々に消滅していく腹部の矢の先をただ見つめていた。

「…なんだ、女。殺る気か?」

「当然よ。カケルが死にかけてるのに、じっとしてられる程私は大人じゃないわ。」

ハルとアルテミスが会話してるのか?

ぼうっと地上の会話に耳を傾ける。

嗚呼、どうにも地面が近付いてくる。どうしたものか。

「フン。いいぜ、お前、名は?」

「ハルよ。あんたの名前は聞いてた。」

「じゃあ問題無し。`ハル´を許可する。

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