《MUMEI》

今度は例のステップを踏み出した。

リズムに乗ってのスピード重視の攻撃。正面からと見せかけて右前方に飛びながらの回し蹴りは軽くブロック。

続く左右の突きを片手でいなし、前方宙返りの踵《かかと》落としを足首を掴んで止める。

「――っ!」

彼女はすかさず逆足《ぎゃくあし》で掴んでいる腕を蹴り、ほどけると見るや身体を捻りながら着地する。

「これでわかったろ? キアンちゃん。俺《おれ》は大丈夫」

オレはわからないし大丈夫じゃない。

誰でもいいから説明してくれ。

一体、オレはどうなったんだ……。

「ジュードさん! 俺もそろそろ攻撃していいですか!? そっちの訓練もしないと『奴等』は倒せないでしょ!?」

勝手なことを口走り続けるオレの問いに、彼は僅《わず》かな逡巡《しゅんじゅん》のあと、

「……そうだね。余裕があるならそれでいこう。キアンもそれでいいね?」

「わかった。それでいいよ」

これまでやられた借りを返すチャンスではある。が、あの素早い動きを相手にどこまでやれるというのだろうか。

「それじゃあ、こっちからもいくよ?」

「うん」

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