《MUMEI》
お仕事2
暫くして蒼依が戻ってきて
蜘蛛威に笛を渡せば
蜘蛛威は壁に軽く寄りかかり
薄く赤い唇に笛口を添え
そっと吹き始めた

『笛、、、』

騒がしい部屋でもいち早く笛の音に気付いたのは斎藤だった
斎藤は上座の方を見ながら酒を飲む

『おっ!!なんだい?うちの太夫はお暇になりやしたかっ?』

蜘蛛威を茶化すのは
月下

『煩いでありんすよ、月下ねえ様』

月下を注意した蒼依

『っ!!いくら太夫の禿だからって…!!』

月下は短気だ
だから、蒼依の胸ぐらを掴むと平手を喰らわせた瞬間笛の音が消えた

『月下、蒼依から離れんし
お客はん方、すんまへん
うちの者の教育がなっとらへんで
豪楕ゴウダ!!月下を彼処≠ヨ連れていきな』

蜘蛛威は蒼依をそっと抱くと自分の身の回りの世話をする男、豪楕を呼べば
月下を連れて行かせる

『い、嫌だ!!彼処に行くのは嫌でありんす!!』

月下の声が廊下に響き渡る

『ねえ様、お顔が怖いでありんす』

蒼依は蜘蛛威の頭を胸に抱くように屈ませると蜘蛛威の頭を撫でる

『なんだい、あんたが慰めてくれるんか?
大丈夫だ、
お客はん方、ほんま、すんまへんでした。
また、わっちの笛をお楽しみくだせぇ』

蜘蛛威は蒼依を離せば立ち上がり笛を吹き始め
原田の恒例の腹踊りが始まり
蜘蛛威も蒼依も笑った

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