《MUMEI》
被弾
しかし、そんなミサに構っている暇はない。
ユウゴたちは全力で走り続けた。
背後からは容赦なく弾丸の雨が降り注ぐ。
三人は土手を駆け上がり、街中へ進路をとった。

「ぐっ……!」
突然サトシが短い悲鳴をあげて体勢を崩し、転倒した。
「おい!」
ユウゴは慌ててサトシの元へ駆け戻る。
「おい、撃たれたのか?」
サトシの体を支えるように手を背中に回す。

その手がヌルっと滑った。

「背中を…?くそ!乗れ」
ユウゴは背中をサトシに向けた。
「…っ、でも」
「いいから、さっさと乗れ!!」
 ユウゴの必死な怒鳴り声に、サトシはその背中に手をかける。
「行くぞ!」
「うわっ」
力任せにサトシを背負い上げると、慢心の力を込めて地面を蹴った。

 サトシの重みで怪我をした左腕がちぎれそうだ。
それでも歯を食いしばってユウゴは走る。
なるべく障害物を背に回すようにジグザグと走りながら、先を行くユキナを追った。

 途中、背後で爆発が起きた。
振り向くと、車道に放置された車が燃え上がっていた。
おそらく警備隊の銃弾がガソリンタンクを撃ち抜いたのだろう。
その近くにはまだ数台の車が放置されている。
「これは、ラッキーだな」
ユウゴは呟き、なんとかユキナに追いつこうとスピードを上げた。
後ろではまた爆発が起きたようだ。
停められた車が次々と被弾し、爆発しているのだろう。
「ユ、ユキナ」
息を切らせながらも、ユウゴはなんとかユキナと並んだ。
「サトシが撃たれた。どこかに隠れるぞ」
「でも、まだ来てるよ」
「今なら爆発のせいで、奴らはちょっと遅れてる。隠れるなら今のうちだ」
ユキナは一瞬、後ろを振り向き、すぐに頷いた。

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