《MUMEI》 万引き。夕方、店長に店を20時から22時、2時間だけ任された。 それは始めたばかりの店員としては早すぎる仕事内容だ。 しかし、急用なら仕方がない。 22時に閉店のため、僕は21時半頃に閉店準備を始めた。 50分を過ぎた頃、1人の女子高生が入店した。 ショルダーバックを肩に背負い、いかにも清純派で、おしとやかな雰囲気を醸し出している。 その女子高生は小説を何冊か手に取り、表紙を眺めていた。 僕はその子を見ながらレジのポジションに付いた。 そして、信じられないものを見た。 女子高生がショルダーバックに何冊か本を入れ込んだのだ。 まだレジ通してないのにカバンに入れるなんて、せっかちさんだなー、と当初思っていたが、よく考えてみると、そんなわけがなかった。 万引きだ。 その女子高生は顔を俯き、ショルダーバックを庇うように腕で覆い、店内から去る。 「ちょっと待って!」 僕が声をかけると、女子高生は死んだように暗い表情でこちらに振り向いた。 前へ |次へ |
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