《MUMEI》
蝶野 栄実
    〜麗羅視点〜


ホームルームが終わってすぐに誰かが私の肩を叩く。


怪訝そうな顔をしながらも振り返ると、短い髪にふわふわパーマをかけた可愛らしい女の子が立っていた。


私が「何?」っと冷たい口調で言うと、ニコッと笑ってその女の子は自己紹介を始める。


「初めまして!


蝶野 栄実(えいみ)ですっ!


仲良くしてね」


私は、黙っていた。


っというより何も言えなかった。



みんな私の性格を知ると近寄ろうとしないから


笑顔で"仲良くしてね"って言われたのは……初めてだった。


何も言わずに視線だけ向ける私に痺れを切らしたのかその子は


「まぁ、麗羅に何と言われようと栄実は、麗羅と友達になるけどね!」


と言ってまた笑った。


馴れ馴れしいな……。


イキナリ呼び捨て。


私の名前を呼び捨てで呼ぶ人物なんて、もう居ないと思ってた。


馴れ馴れしいと感じると同時に、呼び捨てで呼ばれることに懐かしさを感じる。


私は「勝手にすれば」と言い放ち、帰る支度をして席を立つ。


「待って待って〜!


麗羅と一緒に帰るっ」と言ってその子は私の後を着いてきた。

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