《MUMEI》 ケジメ。店長に電話をすると、まだ用は終わらないようで、僕はまだ帰れないようだった。 「………どうしよっかな」 店長がかなり忙しそうで、万引きについては話さなかった。 やはりここは警察に電話しなくちゃいけないのだろうか。 ここで見逃しても、この子のためになるだろうか。 ………考えてもわからない。 とりあえず、店長を待とう。23時半には帰れるはずと言っていた。 「君、どうして万引きなんてしたの?財布にはちゃんとお金入ってたでしょ?」 このままぼーっとしているのもヒマなので、動機でも聞くことにした。 「…………」 ………だんまりか。 「こんなこと言いたくないけど、君は警察に渡されても仕方ないことをしたんだよ、わかる?」 警察というワードに、女子高生はビクッと反応した。 「名前は?」 「………殖野八雲」 「殖野さん……ね。お家の電話番号教えてくれるかな?未遂に終わったことだし、店長と警察には報告しないであげる。だけどお家の人には言わないとね」 「やめて下さい!」 殖野さんは手にとった受話器を奪う。 「ちょ、返しなさいって!」 殖野さんは受話器を懐に隠し、丸くなる。 「両親には………、言わないで下さい」 体が震えている。 「いや、でもそういうわけには………。だって、万引きっていうのはいけないことなんだよ?このままただ見逃すなんて」 「なんでもしますから!」 「はあ!?」 「だからお願い……です」 殖野さんは僕の手を握る。目視できる肩の震え以上に握る手は震えていた。 ………どうしよう。 こんな震えてるなんて、親が厳しいのかな……。だけど、心を鬼にしないと。 「ダメだよ。ケジメつけないと、もう子供じゃないんだよ」 「…………」 前へ |次へ |
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