《MUMEI》 そう言った瞬間、ハルがフィールド内へと駆けてくるのが視界にぼやけて見えた。 「スキル発動!バーストヒーリア!」 「!」 真っ先に唱えたそのスキルは、俺の身体へ効果を示した。地面に割と近いところで身体中の痛みは消え、ヒットポイントも回復した。 素早く着地し、ハルの元へ駆けた。しかしハルは此方を一度も見ない。というか、アルテミスから目を離さない。 「ハル、どうして入ってきた!」 「カケルを護る為。」 ハルはさらっと言いのけた。 「なっ…そんなの俺が…!」 「死にかけたじゃない!」 漸く振り向いたハルの表情は、苦しそうに、哀しそうに、歪んでいた。 瞳に涙を滲ませながら、眉間に皺を寄せながら。 「せめて、一緒に闘うわ。」 その悲哀の表情に、俺まで眉間に皺が寄り、苦しい気持ちになっていく。 「ああ、一人より二人だな。」 その瞳に耐えられなくなり、俺は目を逸らしアルテミスを見た。するといつでも準備万端、とでも言う様に、既に矢を弓に当て待っていた。 前へ |次へ |
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