《MUMEI》 「カケル。」 ハルが腰差しに手を掛け微かな刀の音が鳴る。それに重なる俺の刀の反射光。 「いくぞ。」 呟くと、ハルは俺と秒単位に差の無い踏み出しをして、右サイドへ全速力と見られる速さで疾駆した。 相対し、俺も真反対に同じ行動をする。 チラリと視認したアルテミスの顔に浮かんでいたのは驚愕ではなく、高揚だった。 「いいぜ、いいぜ!噂以上だ!」 「…狂ってるわ……。」 全速力を出してもアルテミスは唯ニヤつくだけで、大した反応は見せないので行動の予測が困難だ。 「…フッ!」 大きく吸い込んで溜めた息を吐く。漏れる音が更に俺の心を落ち着ける。 そして、その吐息の理由は俺の頭上にあった。 振り上げ、光を反射し黒く輝く刀身。 俺は危うく確信していた。 `ハルがいれば勝てる´と。 それが全てでは無かった筈だというのに。 前へ |次へ |
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