《MUMEI》

「水族館かー。彼女と見たかったな……」
ぽつりと東屋が漏らした。なんか不憫だ。



「いつか彼女と行くための下見と思えば?」
フォローし難いな。


「そーいや昨日富岡となんかあったんか」


「えっ、ないよ。」
富岡というか……。



「何、何?愉快な話かな?」七生が東屋との間に入って来た。



「んでもねー!
さあさあ行きましょ、野郎五人で水族館に!」
東屋が颯爽と歩く。
七生と目線が合った。

………………見ないで。

好きって言っちゃいそう。



   パシャ


「南!グッジョブ!」
七生が俺を隠し撮りした南を讃え出した。


「カメラ嫌いゆっただろ!えい、乙矢ガード!」
乙矢の後ろに隠れた。


「……俺は!」


「七生はすぐ自分が面白い方に裏切るからやだ。」


「日ごろの行いが悪いからね……」
南の毒舌が冴え渡る。
結構堪えたらしくて可笑しい。


「いいから先に行け、東屋がはぐれる。」
乙矢に言われて一人遠くに見える東屋を追いかける。班行動だった……。


悪い東屋一人にして。

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