《MUMEI》

ハルと俺が寸分狂わぬ振り落としで、アルテミスの体を切り裂いた――…。


様に見えた。


「…………!」

アルテミスの体がある場所を、刀は通った筈だ。まるで、心臓を抉り捕る様に、切り裂いて見える。

だが、見えるだけだ。

切り裂いた・という感覚は俺の体に、本能に微塵も在りはしなかった。

「不思議だろう。スキルでは見たことが無いだろう。それもその筈だ。これは――…。」


言いかけた瞬間。


「お喋りが過ぎるぞアルテミス。」


何処かで聞いた事のある声だ。

いや、現在ミリオンヘイムオンラインをプレイしている者は誰しも聞き覚えのある声だ。

「矢吹慶一郎……!!」

「プレイヤー諸君、先程ぶりだね。」

フィールド内に躊躇いも障害もなくのこのこと入ってきた。その顔、声、雰囲気は、間違いなく矢吹のものだった。

段々の近付く矢吹は飄々と不敵な笑みを浮かべている。

「アルテミス、もう戻れ。少しやり過ぎだ馬鹿者め。」

「へーい。」

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