《MUMEI》

十メートルもない距離に、この事件の首謀者が突っ立っている。

歩かずにはいられなかった。

刀を持ったまま、闘いを放棄したまま、構わず進み、思わず胸ぐらを掴んだ。


「てめぇわかってんのか…!?」

「やぁ、カケル君。」

喉が奥底で縮こまる。

畜生。

「こんな事して楽しいか?」

「あぁ、愉しいねえ。」

「ハッ。気色ワリィ。」

「そうだ。妹さんには会ったかな?」


「!!」


足が勝手に後ずさる。手はしっかりと掴んで離さないが。

「現実世界に居るんだから会える訳ねぇだろ。」

当たり前だ。

沙弥は元々ゲームはやらない筈だ。ゲームをやっていたのは、俺と昴だけ。

の筈なのに、なんだってんだこの不安は。

そしてその不安は最悪な事に適中する。


「果たしてそうかな?」


「…何が言いたい。」


「妹さん…沙弥嬢は今、愉しくオンラインゲームをしているが?」


全身の血の気が引いていくのを感じた。

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