《MUMEI》

 翌日は、ひどい雨が降った
薄暗い空を、雨に降られながら見上げる坂下の傍ら
あの少女が、寄り添っていた
「……今から、何処に行くの?」
唯立ち尽くすばかりの坂下の服の裾を引きながら
これからどうするのかを改めて問うてくる
他の13候補を殺す
これが、当初の目的だった
だが今、この少女を前にソレをしてしまっていいものか
今更に現れた良心に、手足を囚われ始めていた
ヒトという生き物はやはり非道にはなりきれない
「……桜、探しに行くか」
「……?」
「お前の母親、好きだったんだろ。桜」
だからせめて手向けの花に、と
坂下は少女の手をまた引き
咲いているかも解らないその花を探しに歩き始めたのだった……

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