《MUMEI》
序の序
 私が人間になる前、私は雲の上で人間の世界を見下ろしていました。
 理由は簡単、私が人間になるためにどこの親がいいかを決めるためです。いい親のおなかの中に行きたいというのは夢であり願望です。だからみんなは血眼になっていい親を探します。
 私は笑顔の絶えない家庭がいいな、と思っていると結婚式場で輝く笑顔のあなたを見つけました。私はその笑顔に釘付けになりすぐさまおなかに入りたいと願いました。何年か経ち、やっと神様のお許しを受けるとすんなりとおなかに入らせてもらいました。それが私の誕生日です。おなかの赤ちゃんは入れ物で私という魂が入って初めて人格が形成されたのでした。そして花嫁と花婿は母と父になりました。私は初めての地上に悲鳴を上げました。新しい酸素が胸に入り込み、痛いような、爽やかなような、そんな気分になって悲鳴を上げ続けていた私をそっとあなたは抱きしめてくれました。温かくて懐かしいような気分でした。そのまま私は眠りに落ちました。

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