《MUMEI》
思い出
しばらく経って、私が雲の上にいたころの記憶がなくなり始めた時、私はおなかがすいてわんわん泣きました。赤ん坊というのは不便なもので泣くことと笑うことしかできません。だからこそ大人木なった時の成長を感じることができるのですが。そんな時、あなたは疲れていたのでしょうか、輝く笑顔はくすんでどこか足取りもふらふらしていました。私はすぐに理解しました。今、窓の外は真っ暗です。地上ではそれを夜と呼んでいました。夜、あなたがぐっすり眠っているのをうっかり、本当にうっかり忘れてしまっていた。
「おお、よしよし」
 しかしあなたは疲れ切った笑顔を張り付けながらも私の体を救うようにして抱きしめゆっくりと揺らした。私はその時初めて人間の優しさを感じ取ったのです。

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