《MUMEI》
病気
 私が少女から女性に変わりかけた年のある日、あなたが倒れてしまいました。私は悲しみました。悲しくて悲しくて赤ん坊のように大声でわんわん泣きました。父親は命に別状はないから大丈夫だと励ましてくれたけれども私は安心できませんでした。毎日のように病院を訪れてあなたに励ましの言葉を贈った。あなたは疲れ切っていたが私を見ると幸せそうに微笑んでくれた。その時だけ私は雲の上で見た輝く笑顔を思い出した。
 いよいよ手術の日が近づいてきました。私は最後の日まであなたの手を握りしめました。最後に見たあなたの顔は弱々しく笑顔も空っぽでした。寂しかったです。とても嫌な気分でした。
 手術中、膝を抱えてカタカタと震えていました。もしもこのままあなたが……怖くて仕方がありません。
 私が雲の上にいた時は神様はとても優しかったのを思い出しました。なのに私がもう人間だからなのだからでしょうか、どうしてこんなにもやさしいあなたが倒れてしまうのか、とても無慈悲に人口を削り取ることしか考えていない神様のようでした。そんな神様に私は雲の上のことを忘れ、一心不乱願いました。どうか、どうかあの人を救ってあげてくれ、と。

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