《MUMEI》
焦んなくてもいつか恋をする日が来ると思うし、友達もなんだか作れる自信がついた。
――流されるまま始めたこの仕事から…
自分が…、
生活が変われた事に
幸福感が溢れて、
止まらない。
「裕斗!始めるぞ!」
大きな監督の声が響く。
「はい!」
そして拙いながらも役に入る俺……。
役の中では大学生で、彼女がいて…
たくさんの友達がいて……
▽
「しゃぶしゃぶ最高だったな〜」
「はい、もうめっちゃ美味しかったぁ、ご馳走様でした」
俺はシートベルトをカチャと締める。
「…なあ、ゆうちゃんさ…、俺ん家…これから行かないか?」
え?と思い伊藤さんを見る。
「ほら、外じゃ酒飲ませらんねーからさ、俺ん家でゆっくり飲まね?
ゆうちゃんの好きなビールでもよ」
――無邪気な笑顔で誘われて
「はい、有難うございます!」
「ははっ、じゃー、しゅっぱーつ!」
伊藤さんは車を発進させた。
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